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多様性の樹

 色、かたち、文様。
 理由はわからないが、ことばで表されていない色やかたち、模様に一定の律で整うと、そこにある個性や感情を感じさせることがあった。
あたたかみ、つめたさ、熱さ、寒さ。
幼さ、老い、若さ。
強さ、弱さ。
ユーモア、画一性、はなやかさ、野蛮さ、静けさ、可憐さ、不気味さ、無邪気さ、いやらしさ、猥雑さ。
みじめさ。
考えもなく描き始めた絵の表面でもがくうち、そんな模様に出会った。

「ココハ、チョット怖イ、ネ。」

 その絵を描いている時、叔父に連れられてやってきた風変わりなフランス人の男が、絵の一部を右の掌で隠して苦笑いしながら言った。
ムスリムであり、仮宅していた叔父の古い家の居間で時が来るとメッカに向かいひれ伏していたその男の掌の下には、文様の渦のなかで両手をひろげる、焼けただれたような人間のかたちがあった。なにを描こうかまるで考えもなく、最初に描きこまれたその粗い人間のかたちがそこに残っていたのだった。
 その人間こそが核だったのかも知れない。
しかし、自分はその部分を筋繊維のような模様(それは生臭さ、えぐさ、として印象を残した。)に置き換え、文様で埋め尽くしていった。
それは、珊瑚のようにも見えるし、心臓のようにも見えるらしかった。
着物の歯切れを貼りつけたものかと思われることがあった。
たしかに、自分がある感覚を感じる模様は着物の意匠に通じるものがあった。自分の中で不分明なかたちで沈殿している感覚の泥濘をいじくり回し、なにかを感じさせる状態になると、かつて着物の文様になにかを仮託した職人たちの感覚へと通じるらしい一筋の律に自分を突き抜けて、近づくらしかった。

-『多様性の樹』‐

自分はその絵にそう名前をつけた。
多様な要素が、ある一要素に圧殺されずにそれぞれおのおのの個性の持ち味で一角を占めている。
二十代の自分は、地図として、また自分の腑分け図として、一切のものの理想的な分布図としてその絵を思い為していた。

 


 

 多様性の樹No.1-白-

 多様性の樹No.2-赤- (売却

 多様性の樹No.3-桃色- 

 多様性の樹No.4-青色- 

 多様性の樹No.5-緑-(売却)

 多様性の樹No.6-檸檬-