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食供養画

カナダから送られてきた真空パックには豚のロースが詰められていた。
鋏でそのパックの端を切りこむと、血汁が横に流れて、ピンクの俎板にちいさな血だまりを作った。
 渋谷の、カツばかりを供する店でひがな、肉を扱っていた。
それらはすでに切り分けられ、一枚80グラム、110グラム、140グラムのサイズで供する大きさの肉片にすでに整形されている。血汁を紙で取り、俎板の上にすべてを広げ、塩と胡椒をふりかけてゆく。それを銀色のホテルパンに詰めなおし、一昼夜冷蔵庫で寝かせる。その作業は機械的なもので、自分のなかで肉片はただの物体になり、たんたんと片付けられてゆくべき物と化してゆくのだった。
 かつては生命の破片であり、屠殺の過程があり、解体の過程が実際にはあるのだが、押し寄せる物量と効率化された平板な慾の消費のなかで、そうした血の記憶は捨象される。
 冷蔵庫の中で、人知れず、冷えた小暗い空間にそうして幾段も重ねられたつめたい金属の匣々が、無機的な棺桶に見えることがあった。

食供養画。