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内側のしくみ

‐どの関係にむけて、どの自分の色を出すのか。‐

募る自意識から生じる脅迫感を自分ではまとめられず、二十代前半の自分は精神薬を乱用するようになっていた。
自傷の果て、まとまった量の薬を嚥み、一昼夜ひとり昏睡し目覚めると、猛烈な吐き気のなかで

-音楽と絵を、描きたい。-

じぶんのからだが、ほぼ死に絶えていた欲求のことばをぼんやりと呟くのを感じた。

-バンドを組んで、自分の音楽で、絵を描いて、自分の絵をひとにみせて。-
-愛されたい-。

就職を考える時期に自分はそんな状態で、母に言われるままに介護の資格を取った。そしてたどりついた先の介護施設で、じぶんはもっぱら、そんな自己統御の問題に向き合っていた。
下北のはずれの、沼などありはしないのに、沼のほとりのように思えた古い家屋が蝟集する窪地に借りていた部屋で夜ごとつけていた日記は、出来事の記録ではなく、ただじぶんの内面が向かった行く先、その行く先を統御するよう自分に言い聞かせることばばかりが繰り返されて、そこには日ごとの変化というものがなかった。
-他者との綱引きにも似たせめぎ合いの中で、結果として自分を静まらせることのできる在り様を自分がいかに果たせたのか。-
虐待と、沈黙と、惰性が支配する閉じられたその渋谷の場所で、日々、自分はおりごとに硬直し、敵意もしくは沈黙に流れようとする自分の肚にドリルを突き立て、ダイヤモンドの皮膜を砕くように思い為してひそかに、自分を解体していた。
力づく、という人間的な感じよりも、機械的な感じを求めていた。
ぎりぎりと、歯車にのせて機械的に自分を群れの禁忌の崖へ追いつめ、冷徹に、ひそかに落としこみ、そして、せまい関係性のなかであるからこそ生じる迫害の火を浴びる。
問題を一人糾弾してゆく時、じぶんが火のなかに踏み込むのを感じた。
その火のなかに、五分後の記憶をなくす人々はいるのだった。
そうして自分の内側が要請する雛型に、じぶんを力づくで成形してゆく落としこんでゆく、その血腥い営為は、なにかの原型に思えた。

内側の仕組み。