「メテオ;隕石」

460×920mm

2002

 

「あれが、北斗七星。」

「あの星とそのまましたにいった星をつなぐと」

「大熊座。」

「あのWはカシオペヤ。」

「あの赤いのが」

「アンタレス。」

一週間ほど前に、

東京から越してきた

ヒトシは

夜のなか、

自転車を押しながら

満天の夏の星空を指差して、

言った。

夜虫のすだく田付川のうえには、

七月の星座がひろがり

ひそやかにまたたいていた。

まだ天の川が見えるころだった。

「おれは北斗七星くらいしかしらねえなあ。」

同じように

夜空を見上げて、

おれは言った。

「星、」

「すきなの?」

おれが、

いつもは同級のものの前では

けっして見せないように、

ひた隠しにしているものを

ヒトシは、

無防備に

夜気の風に

晒しているのだった。

「うん。」

「おれ」

「ほんものの天の川」

「見たことなかった。」

「渋谷のプラネタリウムで見たことはあったけど。」

「すごいね。」

闇のなかで

たいそう感動して、

ヒトシの瞳は星を映して

きらきらと輝いた。

川の流れる音が

していた。