連作祭壇画無主物
『学校給食』
(二〇一六年七月から制作)
『せめて自分のところだけは厳しくしよう。
吾妻はJA新ふ くしまで独自の検査体制を取ることにした。
旧市町村ごとに 2カ所ではなく、全農家を調べることにしたのだ。
こうした 流れの中で、
630ベクレルの汚染米が見つかった。
汚染米の検出は農産品の売り上げ不振に追い打ちをかけた。
この年、JA新ふくしまが営む直営店の売り上げは3割も減った。
米の取引価格も落ち込んだ。
吾妻には
「命をかけて売る」
と農 家に宣言した手前がある。
農協幹部とともに、
自ら全国47 の取引市場に売り込みに回った。
(略)ある売り込み先でいわ れた言葉はグサッとくるものだった。
「自分で食べないものを 持って来られてもねえ」。
福島県の学校給食で、県内産の農作 物を県外産に切り替える動きが出ている。
それがニュースで 報じられたためだ。
残された道は一つしかない、
と吾妻は思っ た。
自分たちが食べるしかない。
とくに、
学校給食に福島市産米を使うことだ。
子どもたちが福島の米を食べれば、
安全 性を全国にアピールできる―。』
(プロメテウスの罠『(37)給食に福島米「100%安心と言えないが」』 より)
『最後に、
原発事故は福島県だけではなく、国民全体が被害 者であるということであり、
PR 活動等を行う中で、
福島を差別することなく、
国民みんなで乗り越えていく国難として対 応して欲しいというのが福島の思いです。』
(『福島県からの報告
「福島県の実状とJA全農福島の生産・販売に向け た取組み」
〜農産物被害の現状と安全性、信頼確保のための生産・販売に向けた取組み〜』高橋和也氏
全国農業協同組合連合会福島県本部園芸部
東日本園芸販売事務所次長発言より)
『●福島市では、
ベラルーシ製の食品内放射能測定器を4台導入し、
福島市学校給食センター、
単独給食実施校(26校)について、
当日納入された食材のうち
野菜、食肉など一人当たりの使用量・使用頻度の高い食材について、
ヨウ素131、 セシウム134、137を検査する体制をとっているが、
測定頻度は、
各給食センターについては週一回程度、
単独給食実施 校については、月2回に過ぎない。
また、検出限界は20ベクレル/キログラムとされる。
他方、郡山市においてはこの ようなシステムは導入されていない。 』
『子どもにどのような食べ物を与えるか。
内部被曝です。
郡山では、『あさか舞』を小中の子ども達に食べさせるというこ とになり、
すでに11月8日に決まり、
次の週から導入され てしまった。
非常に私としては、とても耐えられないという ことで、
なんとか止めたいと思っています。
しかし、正直な 話を申しますと、
私自身が変人扱いされています。
二百九十人教員がいるが、
私と同じ考えを持っているのは、ほんの5、 6人程度です。
皆さん口にするのもタブー視されている。
校長にも
『地方公務員なのに、地元の人が作った物を食べられ ないのか』と言われます。』
『福島県教職員組合・國分俊樹氏
喜多方では、
今秋安全宣 言が出たが、
学校給食の栄養教職員が県内産以外の食材を要 求すると、
栄養教職員が集められて、
安全だからと県内産を使用するように指導された。
栄養教職員が県外の食材を要求すると、
生産者側からの突き上げがあって、
校長が栄養職員 を指導する。』
『独立行政法人日本原子力研究開発機構は、
小中学校、幼稚園、保育園等の保護者・教員などを対象に、
「放射線に関するご質問に答える会」
を開催し、
福島県に入って説明会を開催した。
(以下略) 福島・児童関係施設職員F
「放射能に関して心配なことがありましたら、何でも聞いてください、ということなので聞い てみると、
『全く問題はないです』
と言われた。
『甲状腺がんは子どもに今後誰一人発生しない。
今回の福島原発の事故に関しては、
チェルブイリ(原発事故)よりも低い放射線量です。
もしあるとしたら、
心配だという母親のストレスで す』
という話し方でした。
自分の子どもの具合が悪いこと
(鼻血、下痢等が頻繁に起こっているのに、母親のストレスだ と言われました。)』
『福島・児童関係施設職員G
「感受性によってはがんの発生率は高くなるので、
放射線の影響はゼロに近い方がいいのではと言うと、
『そういう考え を持つことの方が子どもに悪影響を与える』
と鼻で笑われました。」
但し、上記F、Gによれば、
そのような話をすると日本原新緑開発機構の派遣者自身、
「頻繁に福島に行くと派遣者の積算被ばく線量があがってしまう」との理由から、
機構では説明に現地入りするのは3回を限度にするとされており、
福島に 入る前後に線量を計測することが求められている、と述べられていた、
と言い、
言葉とは裏腹な行動をとっている。』
(以上 『ヒューマンライツナウ 福島・郡山調査報告書(2011 年11月26日、27日事実調査)より)
チェルノブイリ事故後、
こどもの間に甲状腺癌が多発した。
事故前までの統計と、
事故後数年間の統計との比較で、
いわゆる低線量被曝の健康に対する影響に関して否定的な見方をしていた国際機関も、
この小児 甲状腺癌だけはその影響を否定することができず、
事故後一〇年目には原子力技術を各国に推進する国際原子力機関すらもが、
その影響を認めるに至る。
なぜ、そんなことになったのか。
現在の情報化社会では、
旧 ソ連圏での原発事故後に、
放射能汚染された牛乳を飲ませてしまったこ とが小児の内部被曝をもたらした大きな原因であったことを誰しもが知 ることができる。
福島での原発事故後、
福島、そして福島に近接する県の親御で、
情報 に敏い親御たちは、まず、汚染された食材からこどもを遠ざけようとした。
当然のことだ。
福島は農業県である。
事故前から小学校をはじめとする 公教育機関では、
給食に福島の土地の農産物を使用し、
食と土地と、そ して歴史を学ぶ方針で給食教育が行われていた。
食を通じて、福島県人 としての意識を高めるのだという。
それは大切なことだと思う。
加えて 言うと、
2019年の段階で福島の農業を支えているのは高齢の農業従事者である
(従事者 の平均年齢は七〇代を超えていることが農水省の統計に出ている)。
こん な背景に、放射能災害が発生した。
事故後、
福島で子供を育てていたある母親にあった。
彼女は、
学校給食で配られる牛乳をこどもに飲ませたくなくて、
個人 的に取り寄せたミネラルウォーターを水筒に入れ、
こどもに持たせた。
だが、
学校から連絡が入る。
いわく、
持ち込みは許可しておりませんのでやめてください。
彼女は怒って状況を説明する。
すると言われる。
ほ かの子たちはしてないので。
檄昂してやがて、
その母親はこどもを他県へと転校させた―。
こんな話を直接聞いた。
地震の影響で場所によりダメージを受けた給食提供機関だったが、
使 用している食材の放射能汚染についての体制を整えるまでしばらくか かったことが分かっている。
福島の教育機関による事故後対応の報告書を読んでゆくと、
やはり親御たちからこんな声が寄せられていたことが 示されている。
●給食に使用している食材の産地を教えてほしい。
●使用されている放射能汚染度を検査してほしい。
当然のことだ。
それに対する彼らの対応策が資料とともに公表されていて、
二〇一一 年の七月、
もしくは八月頃にそれぞれの対応が
(無論万全ではないこと が上に挙げた資料からわかる)なされたことが分かる。
(二点:平成24年度食育に関する緊急調査研究会報告書 大規模災害と学校給食(公益財団法人 福島県学校給食会 会 長 丹 治 光 雄)
●第2章 学校給食が直面した様々な問題の状況と対応・課題より)
そこで分かるこ とは、
無検査でやはり福島産の野菜が給食に使用されていた時期があっ たこと―。
2019年現在、
福島の事故当時一八歳以下だったこどもたちから甲状腺癌が多発している。
その原因は何だったのか。
そこへの考察をしてゆくとこの給食問題はかならず視野に入ってくる のだが、
公が多発という事態を認めない以上、
そこまでの考察は公的に なされていない。
あるのは、
その後にやはり給食教育で福島県人として の意識を高めさせる目的のもと地産地消を進めてゆくこと、
その実施例 について示す教育機関の報告ばかりである。
その裏では、
高齢化を極める福島農業界において、
農協による上記の ような働きがあったことが報道筋により記録されている。
福島の耕作地 の放射線量が、
市場で隣あって並べられる南の県の状態と同じようにな るまで待つとすると、
高齢者農業者の多くは、
すでに実際には農作業を 離れている。
農業県である福島にとって、
この傷の深さは測り知れない。
原発事故が及ぼす影響の前例としても、
あまりにも巨大な損害となって しまう。
となれば、
作って、
売ることを押してゆかねばならない。
その先兵として、給食は使われ、
こどもに食べさせる。
それを拒否すれば、
非福島県人の扱いを受ける。
これが、おとなのやり方。
現代、
二〇一一年の話−。